周防大島のみかんの、危機的状況。

画像は去年のもの。寿太郎温州。左が良玉、右が品質劣化玉。気候変動に対応した優良品種とされる寿太郎にも、気温上昇の影響が出る。


2021年刊の拙著「本とみかんと子育てと」の続きの日録をつけている。来年か再来年に刊行する。根詰めて書いた文章はネット上には掲載しない方針だが、大島のみかんの危機的状況の一端を知らせるべく、あえて掲載する。

★★
 日録 書きかけ 11月16日(水)旧10月23日 晴
朝は寒いがひるま暑い。昨日も書いたが、ネットの2週間予報では、昼間の高温(最高気温18~21度)が途切れず続いている。
安下庄アメダスより。昨日の日平均気温13.1度は、2000年平年値では11月16~17日、2020年平年値では11月17日の値である。なんだほぼ平年並みかとダマされてはいけない。
昨日の最高気温19.7度は2000年平年値では10月28日、2020年平年値では11月3~4日の値。昨日の最低気温6.8度は2000年平年値では11月28~29日、2020年平年値では11月30日の値である。今年の秋は去年以上に最高気温が高く最低気温が低い。こうなると、平年並みの平均気温とか平年以下の最低気温はもはや問題にならず、春からずーっと続く高温と、みかんにとって重要な最後の着色時期の超絶高温が諸悪の根源とて、そりゃあろくなみかんが出来へんのも道理と合点がいく。

★★
 日録 11月15日(火)旧10月22日 晴時々曇
 朝から岩崎園地で外来アサガオ除去作業にかかる。カラスの被害が酷い。着色不良が多いが、酷いやつは年明けまでならせても色はつかない。さくっと取込み、廃棄したつもりで農協にタダ同前の原料として出荷するのが賢明だ(畑に大量に廃棄してもすぐに土に還らないので処分に困る)。八分着色でも皮が浮いているものが多い。ネットの二週間予報では、昼間の高温(最高気温一八~二一度)がずーっと途切れず続いている。このままだと完全に色が着くころには皮が浮いて風船になっている。良玉の率は低いが、今のうちに救出したほうがよい。収穫が遅れると良玉までもが駄目になる。とか何とか考えて、10時過ぎから正午まで大津四号の収穫作業に切替える。180キロ取込む。商品にならない大玉が多いため、短時間で量が進む。
 朝晩寒いがひるまは暑い。シャツ一枚で収穫作業なんて考えられんけど、ウソのようなほんまの話。蚊がもぐれつく。カメムシが多い。
 午後かーちゃりん半休とって加勢。井堀上段園地の取残しを収穫、30分で30キロ。いい感じの小玉が多い。ここの大津四号は毎年良玉の率が高い。
 横井手下段園地に移動、四時半までかけて青島の老木3本から185キロ取込む。12日に25キロ先行で取込んでいる。計210キロ。1本あたり70キロになる。老木といっても、ここの青島は1991年(平成3)の19号台風の塩害による大量枯死を受けて緊急改植したものである。8年前(2014年)にこの園地を引受けた当時、各種作業が困難を極めるほどの密植になっていた。苗木を2~2.5メートル間隔で植えて、若木1本あたりの収量の少なさを本数で補うのだが、樹が大きくなって間伐を怠ると密植になり、日照阻害や肥料の競合、農薬のかかりむら等により樹体の成育不順と果実の品質低下を起こす。この園、初年度は全くいい玉が出なかった。酷い密植状態の写真を撮り忘れたのは失敗だったが、これでは仕事にならんとて、まず間伐から手を付けた。日照不足は顕著で、樹そのものが細かった。翌年しっかり実をつけると、実の重みで枝折れが続出した。古い樹は年々枯れていった。根接ぎで樹を作る温州みかんの寿命は、個体差はあるが大体35年程度という。いま大島で、就中安下庄で生産樹の中心となっているのは、19号台風被災の緊急改植で植付けた青島である。その多くが既に寿命を迎えた、もしくは迎えつつある。気候変動による猛暑暖冬寒波ほか極端な気候が、老木の衰弱に拍車をかける。毎年、もの凄い勢いでみかんの樹が枯れる、こんなこと今までになかったと、最近みなさんそのように言われる。うちの場合は、その現象が先行して発生した。私の前にこの畑を借りて耕作していた者の栽培管理の悪さから、樹が弱って寿命が短くなったのだろう、新苗を植えるよりも早く、旧い樹が次々と枯れていった。それはこの横井手の園地だけでなく、他の園地でも同様である。面倒みきれなくなり畑を荒廃させて放り出した、そうした産業廃棄物のような園地しか新規就農者には回ってこない。その点、3年前に取得した横井手の寿太郎温州園地は、多少の課題はあれど状態のよいうちに引継ぎができて助かっている。耕作をやめて他人に引継ぐにもタイミングが要る。体力の低下した年寄りがしがみつけばしがみつくほど畑を駄目にする。いまや大島のみかん畑は継続性のない一代限りのものになってしまった。いま無理して畑を守っている年寄りが死滅すれば、大島のみかん生産は事実上の終焉を迎える。
 話を戻す。今年結実させた青島の老木3本は伐採する。今年休みの2本は来年結実、伐採する。これで、この園地から老木が一掃される。
 4時20分に悠太加勢。横井手は大津四号の若木のみ残して一旦あがり、岩崎で大津と青島を取込む。3人がかりだと早い。30分で100キロちょい取込んで今日の仕事をあがる。岩崎も老木が減り収量が減った。岩崎の収量、12日と今日の合計で大津四号(若木のみ)227キロ、青島(老木と若木1本ずつ)70キロ。合せて約300キロ、人数×時間換算で3時間50分。ワシが引受ける前、老木密植の頃は、この園地2反(約20アール)で8000キロ収穫していたと聞く。道路用地に取られたため、現在稼働している面積は1反半。とすると、6000キロが300キロにまで減ったということだ。
 12日に収穫した地主A園地の在来温州の老木(今季限りで伐採)は、転作当初(1965年頃)植えたものであろう。立派な大木である。1本で150キロ(人数×時間換算6時間)も穫れた。みなさん、古い樹を伐らない。枝枯れが続発しても、完全に枯死するまで伐らない。植替えて10年やそこらでは収量は戻らない。そりゃそうだ、と思う。年寄の投げ出した園地の大半がポンコツであるのには、確たる理由(わけ)がある。