医療への信頼 Trust in Medical Care(河田真智子写文集)

みずのわ出版からのお知らせ

昨年11月刊「医療への信頼 Trust in Medical Care」(河田真智子写文集)。小社サイトと案内ハガキに、次のように記しました。
……3年前、河田の心電図に突然死の波が出た。ICD(植込み型除細動器)を胸に植め込んだ母親の予後は長くはない。重度障害をもつ娘の夏帆を遺して死んでいくのかもしれない。河田は夏帆出生の瞬間から36年間絶えることなく、夏帆と医療を写真に記録し続けてきた。写真画像に定着された医療従事者たちの素顔から、かれらのプロとしての喜びや葛藤、苦悩とともに、患者、家族が寄せる医療への信頼の強さもまた伝わってくる。この写文集を、これから医療を志す若い人たちにすすめたい。また、患者、家族の立場にある人たちを励ます一冊になるであろうと確信する。

ジャケット写真はタラワ環礁。彼岸と此岸のあわい。ジャケットをめくると表1(おもて表紙)には、水平線の位置に英文タイトル一行のみ、“Trust in Medical Care” と刷られています。
「医療への信頼」という言葉を定着させたいと著者は言います。後述しますが、いま、医療現場で写真撮影はできません。個人情報云々といって匿名、顔出しNGが当り前になったいまの時代に、医療従事者や患者家族の顔を写した本を編むことはほぼ不可能になってしまいました。しかし、被写体となった人たちの顔出しと実名記載なくして、写真の本、ノンフィクションの本は成立しません。生身の人間の姿が写り込まない本など、何の説得力も持ちません。本書への写真掲載に際して、被写体となった関係者全員の許諾をいただきました。そして「本書掲載写真の無断転載を固くお断りします」と目次に明記しました。スマホで簡単に接写でき、ネットでいくらでも拡散される、フェイクなどお手のもの、そのような社会状況にあって、著者および関係者の意思に反して写真が悪用されないための著者・版元・読者の間での約束事として定めました。ご理解願います。
この写真群は20世紀末から21世紀初頭にかけての日本の医療状況を患者・家族側の視点で記録した社会資産として将来的に普遍的価値をもつであろう、人類普遍のこの問題に国境はない、ならばタイトルの英文表記は不可欠と考えました。本書編集に際し、京都大学医学部の松田文彦先生にお智慧をいただきました。ゲラを一読、松田先生が言われました。「この先生(夏帆の元主治医、故・粟屋豊先生)いい顔してはる。医者の鑑や」(粟屋先生の写真掲載頁の一部は、サイト上で試し読み可能です。サイト掲載についてご遺族の了解をいただいております)
本書に写真掲載された医療従事者たちの風貌、気概をみてほしい。ぜひ手にとっていただきたい。ぱっと見で値段の高い本と受け取られるかもしれませんが、この内容で、この値段は安すぎると思います。

小社サイト https://mizunowa.com/pub/728/ より、カード決済で購入できます。また、サイト上で一部頁の試し読みも出来るようになっています。

「医療への信頼 Trust in Medical Care」
税込4,400円(本体4,000円)
B5変形判(本文:天地240mm×左右182mm)扉共紙208頁
糸篝丸背上製本セミハードカバー)
装幀 林哲夫
発行 みずのわ出版
プリンティングディレクション 黒田典孝(㈱山田写真製版所)
印刷 ㈱山田写真製版所
製本 ㈱渋谷文泉閣
詳細 https://mizunowa.com/pub/728/

[目次]
プロローグ
1 夏帆と医療
(コラム)夏帆と医療
2 母の病気
3 母と娘の島旅
 第3章のためのプロローグ
(コラム)生きるという旅……島旅のはじまり/二十五歳、結婚/ダイビング修行/夏帆、生まれる/専門医・粟屋豊先生との出会い/夏帆の島旅/マザー・アンド・マザー発足/二人目の子/母親の仕事/リハビリ入院、大阪へ/夏帆十六歳の写真展/移行期の課題/事故/医療事故/東日本大震災/コロナ禍/島嶼医療
4 母と娘の行動記録 1953-2023(年譜)
あとがき
この本の宿題

[著者]
河田真智子(かわだ・まちこ)
島旅作家・写真家。1953年東京生まれ。本名榊原真智子。成蹊大学文学部卒。マリン企画で雑誌編集を経て1980年独立。1978年より島の愛好会「ぐるーぷ・あいらんだあ」を30年間主宰。1999年より奄美群島振興開発審議会委員、鹿児島県100人委員などを務める。本名榊原真智子として、1991年より障害児を育てながら仕事もしていきたいお母さんのネットワーク「マザー・アンド・マザー」を1999年まで主宰。現在、胃ろう、気管切開した娘を在宅で育てながら島に通う。

[用紙/刷色]
ジャケット:ヴァンヌーボV-FS スノーホワイト 菊判Y目 104kg 4°+半マットニス
表紙:マーメイド ナチュラル 菊判Y目 93.5kg
見返し:マーメイド 白 菊判Y目 106.5kg
本文:b7トラネクスト 四六判T目 79kg(1-160頁=4°/161-208頁=1°)
花布 A8
スピン A5



河田真智子作品集第1集 水たまりを飛び越える 柳原一徳の仕事(カードセット)7枚組(148mm×100mm)
印刷 (株)山田写真製版所
プリンティングディレクション 黒田典孝(㈱山田写真製版所)

[用紙/刷色]
ミルトGAスピリット 菊判Y目 153kg 4°

撮られた本人が宣伝するのもアレですが、「医療への信頼」を編むなかで、こんなのが生まれました。カード決済可能ですので、本と一緒にご注文いただけたら幸いです。
詳細 https://mizunowa.com/pub/683/



医療への信頼写真保存基金 設立のお知らせ
河田真智子撮影による夏帆および医療従事者他の写真群(ネガ・ポジフィルム、デジタル画像データ、紙焼き)は、河田歿後、みずのわ出版著作権譲渡されます。この写真群は、病院内での撮影禁止が当り前になった今、二度と撮影できないものであり、20世紀末から21世紀初頭にかけての日本の医療状況を患者・家族側の視点で記録した社会資産として普遍的価値を持つようになると考えます。
写真はアナログ、デジタル問わず保存性において脆弱なメディアです。当面は写真資料の散逸と劣化、そして著者、関係者の意志に反する無断使用を防ぐこと、長期的には貴重な資料として次代に引き渡すことのできるよう、写真資料の適切な保存管理を行い、あわせて医療への敬意と感謝を伝え続けるための出版継続に資することを目的に、「医療への信頼写真保存基金」を立ち上げました。
御協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。(2023年9月)
詳細 https://mizunowa.com/donation/700/



みずのわ出版」の紹介頁を追加しました。農園と写真館の紹介頁は元々あったのに、なにゆえに本業たる出版社の紹介頁がないのか? と某著者のツッコミが入りました。気が回らなかったと言えばそれまでですが。
https://mizunowa.com/aboutus/