新刊ビラの憂鬱。

mizunowa2006-05-21

【5月20日
週末に出来てきた「旅する巨人宮本常一 にっぽんの記憶」(読売新聞西部本社編、6月中旬出来予定)のビラを、海文堂書店の「酔っ払って骨折した」Fおか店長に届けに行き、店頭に並べてもらう。

新刊ビラはB5判もしくはA4判が主流なのだが、今回は少しでも多く情報を盛り込むためにB4判2つ折にし、表側に件の新刊、裏側に宮本常一民俗学関連書の書評コピイ等を入れた。
また、経費を少しでもケチるため、用紙はいちばん安くて薄いものにした。ただし、コンビニでコピイしたものを配っているように思われるのも癪なので、刷は特色1°にした。
・用紙=上質B判T目43.5㎏
・刷色=両面ともDIC305/1°

地方小出版流通センター(以下、地方小)扱い分600枚は、既に印刷所から発送済。
地方小は各版元からの新刊ビラをひとまとめにして、毎週木曜に取次のルートで各書店に配布している。配布料は@8円×600枚→4800円。書店の担当さんがこのビラを見て見込注文を出すことになっているのだが、果たして担当さんに見てもらえているのか否か……大量の新刊が溢れかえる昨今、そこのところが心許ない。神保町のある書店では、新刊ビラが1週間で膝くらいの高さまで溜まる、と聞く。

新刊ビラをめぐって、昨年末に「ジャーナリスト・ネット」に書いた話なのだが、Fおか店長は「ウチは規模が小さいから、棚担当に割り振ってこまめに注文出すようにしているけど、バイト任せの大手なんか、そんなことしてまへんで。この人のこの本が出ているってこと知らん書店員は多いですよ」と云う。一方で地方小の担当さん曰く、それでも見てくれることを信じて新刊ビラを送り続けるしか方法がない、と。それって、無人島から茫洋たる大海に向けてせっせとメッセージボトルを流し続けているようなものだろうか。

兎にも角にも、水増し新刊の洪水にあっぷあっぷしているのは間違いない。これは私の実感だが、ここ数年、新刊ビラを配布してもらっているにもかかわらず、そこそこ注文の取れそうな本でも思ったほどに数字が伸びなくなってきた。それって軽く……否、たいがいヤバい。

ほな、ファクスで書店さんに直接ビラを送りつけたら、もう一寸は目を通してもらえようになる、のだろうか。Fおか店長に訊ねたところ「あきまへん。大量に来るけど、殆どホカしてまっせ。まったく効果ナシですワ。やらんほうがよろし」と……。
Fおか店長曰く、よっぽどでなければ目を通さない。ほな、どんなんがええんですかね。
「ちくま書房が“どすこい通信”って新刊ニュースをファクスで送ってきてましてね、全部手書きやったんですワ。コラムから何からびっちり書いとってね。あれは毎回読みましたな。異動で担当が替ってからワードで作っとんのかキレくはなったけど、もう読む気はせえへんなあ」

今年の春、くろねこヤマトの子会社の人が営業に来て、一寸ばかり説明を受けたことがある。ワードを使ってA4判かB4判1枚もののビラを作る。送り先のファクス番号をエクセルに入力しておいて、それらをまとめて送信しておけば、指定した日時にヤマトの子会社からファクスで同時送信してくれる、というやつ。送信料、確か1件あたり18円50銭くらいだったか。ただし、契約するためには5万円の保証金を支払わねばならず、それは今の経済状態では痛いので先送りにしていた。
ちょうど年度が変わったころからか、そのようなサービスを代行しまっせ、というDMが頻繁に届くようになる。書店の名簿を持っているのが強みなのか、料金は1件あたり25円くらいだったような気がする。ヤマトの子会社よりは高いが、5万円の回収を考えると悩むところではある。

……てな具合だったのだが……。
なーんだ、悩む以前の問題だったのか。ハッハッハ!!


【5月21日】
林哲夫画伯の新著「文字力100」(6月上旬出来予定)ビラの指定原稿を発作的に作成。翌朝10時郵便にのせる。「旅する巨人宮本常一 にっぽんの記憶」のビラと同じくB4判の2つ折。オモテ面に「はじめに」全文と本文で使用した写真数点、取り上げた本100冊の全タイトルと著者名を、そして裏面に「周防大島 島末の記憶」(福田忠邦画・文)、「「銀河鉄道の夜」の世界」(北岡武司著)、「歸らざる風景 林哲夫美術論集」の書評記事等のコピイを配する。こんな本出てまっせということ、少しでも知ってほしい。地方零細版元の切なる願い。



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6月4日、海野弘さんサイン会のお知らせ。

「酔っ払って骨折した」(昨夜は酔っ払って神戸駅のベンチで長時間寝とった……らしい)海文堂書店、Fおか店長からの情報。海野弘さん【サイン会】のご案内。小社のメエルニュウズ“みずのわBCC放送”で告知しましたが、blogでもお知らせいたします。お近くの方はぜひぜひお運びください。

● とき:6月4日(日)午後2時〜3時
● ところ:海文堂書店(神戸・元町3丁目)1F・中央カウンター
  〜 『海野弘 本を旅する』(ポプラ社)刊行記念! 〜

美術、文学、建築、都市、陰謀、ホモセクシャル、ウォーキング……など、あらゆる文化的事象を、飽くなき精力で論じ続けてきた作家・海野弘。その海野氏の「初の読書論」として、『海野弘 本を旅する』(ポプラ社、本体1800円+税)が刊行されました。「本を旅する」エッセイが収録されています。また、本書はこれまでベールに包まれていた海野氏の「素顔」が明らかになる本です。
海野さんに会いたい方、ひと目見てみたい方は、ぜひサイン会に足をお運びください。

【内容】
Ⅰ 百冊の本の再訪
これまで愛読してきた100冊を、丁寧に読み直していく。ドールス『バロック論』、ガートルード・スタイン『パリ フランス』、森銑三編『人物逸話辞典』、村山修一『山伏の歴史』、カルペンティエル『光の世紀』などなど、古典から奇書までが登場する。書き下ろし。

Ⅱ 遊歩者の読書術
古本屋でパンフレットやカタログを買い、旅先では図書館に直行し、パリのカフェで一休み。池波正太郎の目で江戸を見て、ヴィクトル・ユゴーの手法で都市のアンダーワールドを凝視する。時空を超えて自由自在、海野弘流「遊歩者の読書術」、ここにあり。

●海野 弘(うんの・ひろし)
1939年、東京生まれ。出版社勤務を経て、1968年に『アール・ヌーボーの世界』でデビュー。以後、美術・文学・映画・都市論・小説など、多岐にわたる執筆活動を行なう。主な著書に、『アール・デコの時代』、『モダン都市東京』、『ホモセクシャルの世界史』、『私の東京風景』ほか多数。

★遠方のお客様には、サイン本の<お送り>も承ります★
問い合せ 海文堂書店 books@kaibundo.co.jp