「神戸の古本力」責了。

mizunowa2006-11-14

忙しうてついついブログを更新できぬ間に、ひと月の半分が過ぎ去った。年内刊行予定あと5点。ウソのようなほんとの話。
14日夕刻「神戸の古本力」責了。23日午前11時〜午後4時、海文堂書店で開催の「三箱古本市」で初売りの予定。よっしゃ。ひとつ目途が立った。



「神戸の古本力」林哲夫高橋輝次・北村知之 編著

2006年12月刊 四六判並製158頁 税込1575円
ISBN4-944173-44-X C0095 \1500E
装幀 林哲夫
表紙図版 『全国主要都市古本店分布図集成昭和14年度版』雑誌愛好会編、神戸東部



[編著者]

林哲夫(はやし・てつお)
1955年香川県生まれ。画家。書物雑誌『sumus』編集人。1986〜95年神戸市に在住。著書に『喫茶店の時代』(編集工房ノア)、『歸らざる風景』『文字力100』『読む人』(みずのわ出版)他。
ブログ「daily-sumushttp://sumus.exblog.jp/


高橋輝次(たかはし・てるつぐ)
1946年三重県伊勢市生まれ、神戸で育つ。協和銀行を経て創元社に入社。現在、フリー編集者。著書に『関西古本探検』(右文書院)、『古本が古本を呼ぶ』(青弓社)他多数。創元社のウエッブサイトで「古本往来」連載中。
http://www.sogensha.co.jp/page03/a_rensai/rensai.html


北村知之(きたむら・ともゆき)
1980年神戸生まれ、神戸在住。書店アルバイト。メルマガ「早稲田古本村通信」に「チンキタ本バカ道中記」連載中。
ブログ「エエジャナイカhttp://d.hatena.ne.jp/akaheru/



[目次]

はじめに 林哲夫

Ⅰ 神戸の古本力 林哲夫高橋輝次・北村知之
文字の力、古本の力/こんなふうに古本とつき合ってきた/イチオシ神戸の古本屋/サンパル古書のまちから始まった/電車に乗って古本めぐり/皓露書林と黒木書店

Ⅱ 古本エッセイ
関西の古本屋メモ 八木福次郎日本古書通信社長)
ある古書店人の死 内堀弘石神井書林店主)
抄録・雲母虫往来(戦後版) 百艸書屋主人

Ⅲ 神戸の古本力アンケート(到着順)
鈴木創士/寺田操/栗原滋男/熊田司/戸田勝久中島俊郎橋爪紳也/松岡高/小野原道雄/村中秀雄/中嶋大介/井上明彦/南輝子/濱田研吾/小林正利/南敬二/重松慎二/中尾務/南陀楼綾繁津田京一郎岡崎武志/佐々木昌史/扉野良人/大島なえ/田中栞/森田俊雄/海野崇/山本善行福岡宏泰/季村敏夫

神戸古書店リスト1926-2006/地図
神戸古書店総索引

[はじめに、より]
神戸は六甲の山々と大阪湾の海に挟まれた細長い都市である。そこに幕末明治以来、国内はもとより世界中から無数の人々が寄り集まっては去って行き、あるいは今も住み着いている。「雑居」という言葉がぴったりする数少ない日本の都市であろう。
大正15年5月、神戸古書籍商組合親和会によって『神戸古書久美愛会報』が創刊された。当時の会員は約百名だったという。その後、昭和18年の戦時体制下、姫路、明石、但馬、阪神の組合をも合同した兵庫古書籍商連合報国会が結成されたときにその会員数は400名近くになっている(『六十年史』兵庫古書籍商業協同組合)。一方、現在「日本の古本屋」(東京都古書籍商業協同組合により運営されているウエッブ・サイト)に開設されている古書店検索によれば兵庫県古書店は92件である。ごく単純に大正15年における神戸市近郊の古書店数と現在の兵庫県下の古書店数はほぼ同じだということになる。
これをもって神戸の古書業界が極端に縮小してしまったと考えるべきではない。当時と現在とでは書籍そのものの社会における位置も違えば、古書のもつ意味も異なっていよう。あるいは逆に戦前の繁栄を思うべきかも知れない。ただ今回、大正末年頃からおよそ80年間の兵庫県古書店リストを作ってみて少々意外だったのは、第二次世界大戦をまたいで現在まで存続している古書店の少なさである。後藤書店、上崎書店、皓祥館書店、藤本書屋、宇仁菅書店……。よく蔵書一代と言われるけれども、コレクターのみならず古書店もまた一代限りの商売なのだろうか。あるいはまた神戸という離合集散の激しい、ある意味、階層性や縄張り意識の強い(よく言えば自己主張のはっきりした)地域性によるものか。簡単に結論付けることはむろんできないが、あれこれと考えさせられたのは事実である。
林、高橋、北村による海文堂書店でのトークショー(2006年7月17日)をきっかけとして本書は編まれた。神戸を大地震が襲って12年になろうとしている。表面的にはあの悪夢のような惨状は修復されて街は新しく甦っている。しかしまだその深手がまったく癒えたとはとうてい言えそうもない。当然ながら古書業界における様相もけっして楽観できるものではないようだ。われわれは業界とはほとんど無関係であり、単なる客とも呼べないような存在に過ぎないが、微力ながら何か神戸の古本力を奮い立たせる方法はないかと真剣に考えた、わけでは決してなく(貢献するつもりなら黙って本を買えばいいのだ)、神戸の古本屋とはどういうものだったか、今まさにどういうものなのか、それを知りたかっただけの話である。
ご寄稿いただいた八木福次郎さん、転載を快く許可してくださった内堀弘さん、アンケートにお答えくださった皆さん、そして各種資料を提供してくださった加納成治さん、南陀楼綾繁さんに深謝します。岸百艸氏の文章については、非常に貴重な証言であり、かつ稀少な資料であることを考え、抄録という形で引用させていただいたことをお断りしておく。
神戸の古本力いかなるものか、実感していただきたい。
編者代表 林哲夫