“身内”こそ敵、か。

mizunowa2006-01-22

昨年7月に刊行した『宮本常一 旅の原景』(なぎさの記憶2)の売行が芳しくない。手つかずの返品分だけでも2筺半ある。年を越して放っておいたものなので、思い立ったが吉日と整理に取りかかった。勘定したら116冊。この間何冊か抜いている分を考えると、刊行時委託分の半分、120〜130冊程度が戻ってきたことになる。
こんな場合版元はカバー、帯、筺を取り替えて、注文時に再び出荷するのだが、ここで再出荷不可能なものを選っておく必要がある。
ここ2、3年、返品率が日増しに上昇しているのだが、それに伴ってか、再出荷できないほどに痛んだ返品本が以前にもまして目につくようになった。
今回の116冊の場合。再出荷可能99冊、不可能17冊。実に15%がアウトだ。ちょっと前までは、ハードカバーでいわゆるショタレ本はそんなに多くは出なかったのだが……。これが並製本だったら、と思うと恐ろしい。
取次や運送屋の扱いが荒いのは今に始まった話ではないが、それにしても最近の返品の具合は酷すぎる。表紙がべこっとひん曲がったり凹んだり、本文用紙が破かれていたり……。カバーや帯、筺が痛んだだけなら交換すればすむが、本体がオシャカではお手上げだ。
今回は無かったが、以前、珈琲のシミがべったりついたやつが返品されてきたこともある。あと、これはルール違反なのだが、スリップのついていない返品も多い。
ここまで痛めつけられてしまうと、商品として人様に売るわけにはいかず、かと云ってどうぞと人にあげられる代物でもなく、すべて廃棄するほかに手がない。この惨状だけは、著者には見せられない。
工場勤めの友人曰く、現場の荒廃がこんなとこに出てくるんちゃうか、と。さもありなん。本って大事にされてへんな、といつも思う。やはり“身内”こそ敵、か。