内ゲバの街、神戸の怪。

神戸って土地は、どうも他とは違う。本にかかわっての、いわゆる“業界”廻りで誰と誰が険悪やという話が多い。それ自体どの土地、どの業界でもあることだが、普通は“大人の対応”であまり表に出さないのに、神戸の場合はそれがかなりの勢いで流布している。表立ったケンカが異常に多いのはY口組の発祥地ゆえか。――先日、ある人とこんな話になった。
なるほど言い得て妙、だ。○○氏と××氏はNGやなー、てな具合ですらすらと出てくる。私自身をかえりみても、不本意ながらさういうのが片手くらいはある。東京の“業界”廻りでは私自身、そんな険悪な関係は皆無なのだが(12年前に袂を分けた相手はいるが、あまりの“電波”ゆえ今さら関わり合いになりたくないし、時間も経っているのでここでは数字に入れない)……やっぱり神戸は伏魔殿、か。

神戸の怪、といえば――。神戸新聞に本の紹介記事が出ても、不思議なことに殆ど動いたためしがない(ちなみに、私が奈良新聞にいた当時月に2本くらい書評らしき記事を書いていたが、少部数ゆえかそれとも奈良という土地柄か、残念ながら版元さんの売上に協力できたためしはなかった)。これとは対照的に、中国新聞に出た場合は両手両足の指を足した数よりはるかに本が動く。やっぱり神戸という街は、同じ政令都市でも広島、福岡あたりと比べて“読む”層の絶対数が少ないのかもしれない(西神戸、明石、加古川在住者の“素通り”と神戸在住者の大阪への“流出”も大きいのだろう)。コーベブックス、三宮ブックス、日東館、漢口堂、宝文館など、地元書店が次々に姿を消していったのも、震災だけが理由ではなかろう。全国展開したジュンク堂はさておき、地元書店は元町・三宮では、いつの間にか海文堂だけになってしまった。「誇り高きインディペンデント」「絶滅寸前レッドデータ書店」とは、海文堂書店の丁稚こと平野義昌さんの命名。平野さんの筆になる「本屋の眼――神戸元町海文堂書店 丁稚の備忘録」(仮題)は12月中旬刊行予定。乞ご期待。