ぐつぐつと云い続けるが、書肆アクセスが無くなったのは痛い。

mizunowa2008-03-11

【写真】
最近リニューアルした、海文堂書店中央カウンター後方の棚。編集グループ〈SURE〉、編集工房ノアみずのわ出版、3社の刊行物をメインに。


【「spin」サイン本。もう仕込むのやめるつもりだったんですがね……】
「spin」定期購読のお願いのDMを、先週末「sumus」の定期読者あてに送った。その中の一軒、神奈川の古本屋さんから、「spin 03」の執筆者全員による限定版サイン本を仕込む予定はあるかといふ問い合わせの電話が入った。サイン本なら10冊は確実に捌ける。サイン本でなければ5冊くらいかな。佐野繁次郎の装幀目録だからそこそこ売れると思うし、こちらとしても力入れて売りたい。それだけに、これまでと同様に限定版サイン本があれば有難い……と。この古本屋さんは、「spin」01と02のサイン本を、昨年11月に閉店した書肆アクセスから仕入れていたという。

「spin」01と02のサイン本はそれぞれ100冊仕込んだ。執筆者に2冊ずつ献本し、残りを書肆アクセス東京堂書店海文堂書店など、この手のサイン本が確実に捌ける、極々限定された書店さんだけに納品していた。執筆者全員のサイン入り! といふのがミソなのだが、これって滅茶苦茶に手間暇と経費がかかる(説明不要ですよね)。書肆アクセスが閉店したこともあり、また、アクセスで「spin」を買っていたお客さんがそのまんま東京堂に流れるといふわけでもないので、「spin」のサイン本はもうやめようと思っていた矢先だった。さう云われたんぢゃやめられませんわな。この先も出来る限りは続けなアカンかな……。


書肆アクセスといふ〈場〉】
しかしまあ、書肆アクセスが無くなったのは痛い。件の古本屋さん曰く「一寸気になる本があっても、実際に手にとって中身を確認できる〈場〉が無くなってしまった。アクセスへ行って現物を見れば、どれくらい仕入れられるか判断できたんですけどね。みなさん大困りですよ」と。さうなんだよなー。こんな調子で何冊か売り逃すであろう、ワシら版元もまた大困りだ。
76年の開店以来ずーっと書肆アクセス単独では赤字続きだった旨、「spin 03」所収のトークショーで元店長の畠中理恵子さんが喋っている。売上の落ち込みで年間500万円の赤字を出すに至り、本体で支えるにも限界といふのが地方小の説明だった。
今更ってなもんだが、地方小の契約版元は1000社くらいあるのだから、それこそ赤字分を契約各社が補填すればそれで何とかなったんちゃうか。1社あたり年間5000円ずつ出せば赤字は埋まるわけでしょーが。「地方・小出版」に特化した東京、それも神田神保町での展示販売の〈場〉を確保することを思えば年間5000円の“冥加金”くらい安いもんぢゃないか。
「ずーっと赤字だったといふこと自体アリエナイ。商売としてどーかしている」とみる向きもあるだらうが、私はそういった論には与しない。地方小ってね、おカネになるベストセラーなんかはじめっから扱っていないのですよ。そこのところが、普通の取次とは訳が違うんですよな。それだけに書肆アクセスを切るべきではなかったと、いまもさう確信を持って云いたい。「地方小本体と書肆アクセスは両輪やからね、その片方を切ったのは大失策だと、ワシは思うよ」。これは、いつもお世話になっている某古本屋さんの言。いずれにせよ、困り事は果てしなく続く。