「神戸・ユダヤ人難民1940-1941」

mizunowa2014-03-01

図書館や書店で「アンネの日記」および関連書の破損被害が相次ぐ、といふ事件にふれて、小社刊行物の宣伝を以下。


神戸・ユダヤ人難民1940-1941―「修正」される戦時下日本の猶太人対策
金子マーティン著 2003年12月刊 A5判上製295頁 本体4,200円+税 ISBN978-4-944173-23-5
詳細→ http://mizunowa.com/book/book-shousai/kobe-yudaya.html


あとがきより、一部抜粋

本書は基本的に資料紹介と問題提起の書であると心得ている。「神戸新聞」という一地方紙に掲載されたユダヤ人難民関連記事や日本の「ユダヤ問題」、日本人の「ユダヤ問題専門家」にも言及したナチス資料などの紹介である。それらの資料が日本へ避難したユダヤ人難民研究のこれからの発展にいくらかでも寄与するよう期待する。
紹介した資料の筆者による解釈に納得できず、異議を申し立てる読者も当然いることと思われる。歴史資料=史料の解釈は、常に解釈者の現在の社会的立脚点から歴史の再構成を試みる営為であり、その解釈者の世界観や歴史観がどうしても反映される。そのため、同じ史料であっても、まったく異なる角度からの解釈がなされたり、正反対の評価が試みられることもありうるが、それは思想・言論などの自由が確保されている社会では当然のことだろう。筆者の史料解釈に誤認が含まれている可能性もあろう。また、じゅうぶんな追究をする力量が不足するため、不明なままで放置せざるをえなかった事柄も多い。ご教示と真摯なご批判を仰ぎたい。読者諸氏の自由な史料解釈の可能性を確保するため、紹介史料からなるべく多くを引用するよう努めた。画一的な解釈ではなく、さまざまな解釈が許される社会、それが民主主義社会である。筆者の史料解釈などに対する批判を提示する読者は、感情論的批判を避け、史料に則った批判を展開していただきたいと思う。


この本は600部程度捌けた。刊行から10年を経たいまも半年に2、3部程度ではあるが補充注文が入る。刊行当初から確実に捌けたとはいへ、印刷代を全額支払うのに1年かかった。いま刊行したとすれば200部にも届かないであろう。それほどまでに、本が売れなくなった。