爽やかではない。

ハリポタの翻訳者であり版元の社長でもあるM氏が2002〜2004年の3年間で35億円の申告漏れ(ヘンな日本語。要するに脱税ぢゃないか)を東京国税局から指摘された。スイスに居住しているとして日本で申告していなかったが、生活の根拠が日本にあり申告が必要と認定された。新聞によると、スイス移住後も頻繁に来日し、出版業務を取り仕切り、ハリポタの営業活動をしたりしていた。2004年までの3年間は日本での滞在日数がスイスでのそれを上回っていた、という。

ほでほで。実際、日本で仕事しているわけよ。そりゃあこの国に税金払わなアカン。
どうしようもない国だとは思う。腹立ってしゃーない。でも、払うものを払ったうえで、この体たらくを糺していくために動かねばならぬ。合法的手続きなのだらうが、ルールを守らないヤツに闘う資格はない。節税と脱税はその本質において違う。

オレはこんな国のためにこれまで多額の税金を払ってきたのか。それを思うと悔しくてならない――。阪神大震災の折、被災地救援をめぐってダイエーの故中内功氏が佐野眞一さんのインタビューに対し語った内容は、近著「戦後戦記」(平凡社)でも触れられている。M氏と比較しては中内氏に失礼だが、この言葉ひとつとっても、スケールの違いが浮かび上がってくると思う。
そう、こんな国なんだ。でも、こんな国であろうとも、それが私たちの国なのだから、私たちは否応なしに対峙せねばならぬのだ。

東京国税局に対し、M氏は争う構えだという。
あまり同業者の悪口は言いたくないが、共感できるところがまったくない。夢をあたえる商売がこんなことしてはいけない。爽やかではない。