電話機のない電話ボックス――由利島しょにょに。

mizunowa2007-06-18

【写真】
由利島の浜。上陸地点のすぐ近く。


瀬戸内の島なのに、なぜか浜にはサボテンの花――。奥にあるのが、電話機のない木造電話ボックス。イワシ網でにぎわっていた昭和30年代に赤電話が引かれ、40年代に無人島になっても残った。出作の人や近くで操業する漁船に何か起こったとき、ここからSOSを発するためだった。電電公社の民営化によるNTT発足後、使用頻度の低い電話ボックスが次々に撤去されていき、ここもその一つになりかけたが、二神島の漁協がそれに反対し、加入電話(ピンク電話)に変更することで撤去を免れた。小社刊「宮本常一 旅の原景」(写真=田中慎二・荒木肇/文=佐田尾信作)には「いつも傍らに10円玉が積まれ、借りた人の礼状が貼られていた」と記されている。使用頻度の多寡だけで語ってはならない、まさしく命の電話だったのだ。
やがて回線不通になり、電話機も平成の世になくなった。赤錆びた海底ケーブルが今も残る。電話ボックスはかなり傾いている。次に台風が来たら、もう駄目かもしれない。