言葉の変化

【2月8日】
8日付から中国新聞文化面コラム「緑地帯」で、「島びと三代の記」連載開始。土日を除いて8回。鯛狸(=^・^=)さんの“内緒のペエジ”に切り抜きのデジカメ画像あり。
http://www.d3.dion.ne.jp/~shouji/sub67.htm


【2月9日】
中国新聞の佐田尾さんから連絡あり。明10日付「島びと三代の記」3回目、「グベンシャ」という大島方言が出てくるくだり。これだけでは大島以外の人にはわからないだろうから、括弧書きで「お金持ち」と記しておいたのだが、それよりか「分限者」と括弧書きしておいたほうが分かりやすいのでは、との指摘。その線で直しを入れてもらう。


この「グベンシャ」という言葉。分限者の音便が訛ったというより、誤って定着した言葉だと思われる。執筆時、念のため沖家室島のインターネット老人Iさんに電話して聞くと「ゴベンシャ」と云われた。旧東和町下田のFさん、外入で生まれ戦後安下庄で育った母は「グベンシャ」だと。沖家室島出身の父は「知らん」。そこのところは部落ごとや個人個人、そして年代で違いがあるのだろう。


お金持ちを指す言葉に、沖家室島では「ヤンバン」というのがある。朝鮮語両班(ヤンバン)からきた、という。両班とは、『朝鮮を知る事典』(平凡社)によると「朝鮮の高麗や李朝において、官僚を出すことができた最上級身分の支配階級……東班(文官)と西班(武官)を意味する」言葉である。沖家室島でいうところの「ヤンバン」は本来の朝鮮語の意味とはまったく異なるのだが、戦前、沖家室島から朝鮮に渡った人が多かったことを考えるとさもありなん、と思う。


そういえば、イゴという虫がいて、グベンシャイゴは殺しちゃイケン、貧乏イゴは殺せ、と母方の祖母に教わった。体長1センチ程度のゴキブリみたいなやつだが、とりあへずはゴキブリほどにはエンガチョではない(だからといって気色のよいものではない)。グベンシャイゴと貧乏イゴをどうやって見分けるのか、いまだにわからない。朝蜘蛛、夜蜘蛛みたいなものだろうか。


「グベンシャ」で思い出した。
母方の実家がある安下庄の西の外れ、庄の部落はアメリカ、ハワイ、カナダからの移民帰りの人らが多かった。カナダ帰りのあるお宅では、この間亡くなったおばさんのことをみんな「ママ」と呼んでいた。で、そこのおじさんのことは「ダリ」と呼んでいた。「ダディー」の間違い。ちなみに、カナダでその一家と同じ所に住んでいたという別の一家では、そこのおじさんが、二人称は「あんた」ではなく「ユー」と云っていた。

こりゃあ一寸オモロイと思ったので、佐田尾さんにメエルを送ったところ、そのネタも織り込んだらよかったですね、と返信が来た。いやいや紙幅が足りんかったデス。また、改めて書き起こすことにしたい。無意識が私の記憶を流し去ってしまう前に。